体内の酵素の働きを光で操作する?

東京大学と科学技術振興機構が、人のインスリン代謝などに関係するタンパク質リン酸化酵素(Akt)の酵素活性を、光照射により分単位で操る手法を開発し、Akt活性の時間的な変動パターンが細胞応答を制御する新規メカニズムが存在することを証明したと共同で発表しました。

人工の光感受性Aktと数理モデルを組み合わせ、世界で初めて細胞内のAkt活性の時間的な変動パターンを自在に操作することが可能となり、Aktが密接に関連している糖尿病やガンをはじめとしたさまざまな疾患の発症メカニズム解明や薬剤の最適な投与量や時間の提案などに寄与することが期待されているとのこと。

生体内における酵素などの分子の活性は、あらゆる生命機能の維持や発揮に不可欠であり、分子活性を人為的に操作する手法は古くから研究されてきました。
これまでは、化学物質を用いる手法が用いられてきましたが、近年、光感受性タンパク質を分子に組み込み、光照射で分子機能を操作する「オプトジェネティクス」と呼ばれる技術が注目されていて、この手法では光によって時空間的な操作が可能な点に大きな特徴があります。
化学物質は生体内で拡散するため不可逆的な操作になる一方、光による操作は、レーザーなどの指向性の高い光源を用いることで、時空間的に自在な操作が可能です。
しかし、このオプトジェネティクスにおいても、どのように光を照射すれば、どの程度、光感受性分子が活性化するかという定量的な見積もりが困難であるという大きな問題があり、何らかの一般的な技術・方法論の開発が急務とされていました。

今回、東京大学と科学技術振興機構が発表したAktの酵素活性を、光照射により操る手法により、Aktが調節する代謝や遺伝子発現といった生命機能の異常、すなわち糖尿病やガンをはじめとした人のさまざまな疾患を抑制できるようになるのではないかと期待されています。
今後、さまざまな時間パターンのAkt活性入力とそれに伴う代謝物質や遺伝子発現などの細胞応答出力を定量的に解析することにより、Aktによる疾患発症のメカニズム解明や糖尿病患者に対するインスリンの最適な薬剤投与パターンの提案などに寄与することができるようになるでしょう。
また、本研究で示された光感受性分子の設計や数理モデル構築などの一連の手法は、Akt以外の分子にも応用可能であるシステムとしての汎用性を備えており、オプトジェネティクス研究領域全体の発展に貢献することが期待されています。

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