「加熱食が健康によい」という誤解

四年ほど前のことです。
三歳の男児が母親に連れられて、クリニックに来院しました。

母親によると、二歳のころから成長に不安が生じ、三歳になると足の変形が見られるようになったとのこと。
すぐに病院に行ったところ「クル病」との診断を受け、カルシウムの入った食事の指導と、ビタミンDの飲み薬を与えられたそうです。

もともと母親は、ある「玄米加熱菜食グループ」の会員でした。
グループでの指導を受けて、男児が一歳半のころから、玄米食を主食に、味噌汁、漬物、煮た野菜、妙めた野菜のみの食生活を続けてきたといいます。
男児に生野菜や果物、肉、魚、卵などをいっさい与えてこなかったのです。

私は、すぐさま母親に、男児が生野菜や果物、肉料理、魚料理、卵料理をバランスよく摂れるメニューを指導しました。
母親は「生のまま食べても平気ですか」「肉を食べても大丈夫なんですか」と何度も私に確認してきました。
「生は怖い」「肉は怖い」というイメージがかなり刷りこまれているようでした。

医師は「生きた酵素を摂取することの重要性」「生食中心のメニューが大切であること」「肉や魚も上手に摂れば、男児にとってすばらしい栄養素になること」を教え、母親に納得してもらいました。
さらに治療効果を高めるために、胃、腸でさかんに活動する酵素飲料も処方しました。

その後、男児はみるみる元気になり、足の変形も治まり、身長もどんどん伸びていきました。
小学校に入学するころ「他の児童よりも体格がよくて、健康そのもの」と母親から電話を受けたそうです。

これは、わたしが知っているケースのごく一部にすぎません。
この母親のように、日本だけでなく世界各国でも、近年加熱調理を施した食事だけを食べるという人が数多く存在します。
主に野菜中心で、肉、魚などの動物性食物を極端に摂らないことも特徴です。

不思議なことに、日本人は「今日から生食だけの食事にしましょう」と指導されると、なかなか思うように実行できませんが、「加熱食のみを食べましょう」といわれると、案外簡単に実行してしまう傾向にあるといわれています。

人聞は「火」というすばらしい文明を手に入れ、それを使って調理したほうが美味しい食事になることを知ってしまいました。
なんとなく、火を通したほうが「安心だ」とする傾向もあります。

それなら無理して「生」を食べる必要もない、「加熱食だけのほうが健康のためによい」と指導されたなら、なおさらです。
こうして、各地で「玄米を中心とした加熱食の会」が広まっていったのでしょう。

しかし、生野菜や果物といった、生きた酵素をたっぷり含んだ食物をまったく摂らない生活が続くと、いかに深刻な事態が待っているか・・・このことをよく理解することも重要なのです。
私は、極端にいえば「生食だけの生活」のほうが「加熱食だけの生活」よりも、健康的であると考えます。

それは「食物酵素(外部から摂りこむ酵素)が大量に摂れる」か「ゼロである」かの差です。

近年に入って、医療先進国アメリカでは「ファイブ・ア・デイ」 キャンペーン(1991年にPBH〈農産物健康増進基金〉とNCI〈米国立ガン研究所〉などが協力し合つてはじまった、ガン予防を目指した国民健康増進運動)をはじめとした「生食運動」がさかんにおこなわれています。

生の食べ物を中心に提供するローフードレストランが数多く出現し、各地で人気が高いのも、そのひとつの表れでしょう。
「ナチュラル・ハイジーン」という考え方に従った会も、全米中に膨大な数があります。

この会の考え方は、

  • プラントフード(plant food=植物性の食べ物を食す)
  • ホールフード(whole food=植物全体を食す)
  • ローフード(raw food=生の食べ物を食す)

この三つを中心とした食生活を送ることです。

もちろん、「酵素栄養学」においても、生食は最大のポイントになります。

しかし私がみなさんにすすめる方法は、生食のみという極端な方法ではありません。
割合でいうと生=5に対し、加熱=5(もしくは生=6に対して、加熱=4)で、毎日三度の食事を摂る方法です。

これは私のオリジナルの食生活メニューです。
肉も、魚介類も、アルコールも禁じません。
煮物、焼き物、妙め物もOKです。

長期間続けるには、これくらいの柔軟性が必要だと思います。

コメントを残す

このページの先頭へ